Flying pan
カリフォルニア州Los Angelesで電気楽器とアンプリファイアーの生産を手掛けていた"Electro String Instrument Corporation"・・・・
現在の "Rickenbacker International Corporation"の起源である。
1920年代、Los Angelesでは折りしも訪れた電気的な工業理論の著しい進歩を背景に、ギターカルチャーとしてドブロやナショナルに代表されるスティールギターの生産が顕著になっていた。
Adolph & Frying Pan
Adolph RickenbackerとGeorge D. Beauchampの二人は、そういった生産工場やエンジニアとも内密に関わりつつ、最終的には初のエレクトリック・ピックアップシステムの開発に成功する。この歴史的なピックアップが、その形状に由来する"Horseshoe Pickup"である。そして、そのピックアップを搭載し、初のエレクトリックギターとしての試作に完成したのが、"Flying Pan"と呼ばれる、記念すべきエレクトリックギター試作一号機である。
この時に二人は、正式に"Electro String Instrument Corporation"を社名とし、生産するモデルを"Rickenbacker"と名付けたーーー
今日まで脈々と続くRickenbackerの礎がここに誕生する。
George Beauchamp
カリフォルニア州Santa Anaで "R.T.E.C" と云う電気関連会社を営んでいたFrancis C. Hallは、第二次世界大戦後、レオ・フェンダーの製作したスティールギターとアンプリファイアーを販売し始め、1946年には正式にフェンダーの販売代理店として 販売ネットワークを構築していく。
その後の1951年になると、F.C.Hall は先述のAdolphから"Electro String Instrument Corporation"を買い、確立した販売ネットワークを武器にRickenbackerの近代化を加速的に実現させていくのである。
1950年代中盤からギターマーケットは大きな変革期を迎え、ロックミュージックの台頭と共に出現した新しい音楽スタイルが、新たな演奏方法を生むべくエレクトリック・スパニッシュギター等をギタープレイの主流としていくのである。
Rickenbackerも時代のトレンドを敏感に捉え、生産の中心をラップスティールギターから新たなモデルの開発へと向けていき、そのラインナップをリニューアルしていく事で生まれたのが、Combo 600 や 800 といったモデル達である。
Rap steel
1950年代後半からは、エレクトリックベースや今日で云うスルーネック構造なども採用し、革新的な発想のもと、数々のモデルを登場させていく。
そして、1960年代に突入してからは、Rickenbackerに歴史的ターニングポイントが訪れる。ビートルズの登場である.....数々の名曲とステージにおいて、メンバーがRickenbackerをプレイした事は万人の知るところであろう。この事により、6弦ギターに限らず、12弦ギターからベースモデルに至るまで、Rickenbackerのサウンドとポテンシャルが大きく世に知られることになる。
Rap steel
1970~80年代にかけても、数多の著名なプレイヤーがRickenbackerを手にし、その個性溢れる特徴的なサウンドで多くの名曲を紡ぎ、絶世の名演を魅せていく事になる。これらのことから、Rickenbackerへの急激なニーズが生まれ、いよいよ生産工場の変革に着手する。1964年まで続いたLos Angeles の Electro String factoryでの生産は、この年にOrange Countyの傍にあるSanta Anaに移され、生産キャパシティを大きく飛躍させる事に成功する。そして同時期に、社名を"Rickenbacker,Inc,."とし、ここに近代リッケンバッカーが誕生するのである。
Museum
1984年9月に F.C.Hall は引退し、息子であるJohn Hall と 彼の妻である Cindalee がその後を継承する。彼らは、生産と販売を効率よく集約した上で、生産の向上を目指すだけではなく、楽器を造るクラフトマンシップを貫くことを大切にし、偉大なミュージシャンに代表される古き良きモデルと、革新的なアイデアを盛り込んだ新しいモデルの開発を両立する。現在のRickenbackerの最高責任者である彼は、日々生産が行われているオフィスの横で、数々の試作品や歴史的モデルを壁一面に保管し、「ミュージアム」と呼びながらそのひとつひとつを今でも愛し続けている。
かのリバプールの偉大なバンドのギタリストは、かつてインタビューにおいて好きなギターを問われ、こう答えたという。
「Of course, it's a Rickenbacker!」
さて、同じ質問を、飛躍的に近代化の進んだ今日にしてみた時、幾多のプレイヤーは何と答えるであろう...
それはきっと同じ答えのはずである。
RIC is always yours...Rickenbacker